1. HOME
  2. ブログ
  3. ノンテクニカルスキル
  4. 【医療安全】チームステップスとは~その意味と実践事例

【医療安全】チームステップスとは~その意味と実践事例

医療現場における安全性と質の向上は、医療従事者にとって最も重要な目標の一つです。近年、医療の現場で注目されている「チームステップス(TeamSTEPPS)」は、チームワークとコミュニケーションの強化を通じて、医療の安全性を高めるために開発された戦略的なプログラムです。

この記事では、チームステップスの概要とその導入の背景、実際の医療現場での実践事例、そしてチームステップスの効果と評価について詳しく解説します。

チームステップスの概要と導入の背景

チームステップス(TeamSTEPPS:Team Strategies and Tools to Enhance Performance and Patient Safety)は、アメリカの軍医療システムから発展した、チームワークとコミュニケーションを中心とした医療安全向上のためのプログラムです。
このプログラムは、患者安全を確保するためのスキルセットを提供し、医療チーム全体のパフォーマンスを向上させることを目的としています。


概要と導入の背景

チームステップスの概要:
チームステップスは、チームリーダーシップ、状況モニタリング、相互サポート、コミュニケーションの4つの主要なスキル領域をカバーしています。これらのスキルは、医療現場での迅速かつ的確な意思決定を支え、患者の安全を守るために重要な役割を果たします。
プログラムは、実践的なツールとストラテジーを提供し、これによりチーム内のコミュニケーションが強化され、エラーの発生を未然に防ぐことができます。

導入の背景:
チームステップスは、医療事故や医療過誤の増加が問題視されていた背景の中で導入されました。特に、コミュニケーションの欠如やチームワークの不足がこれらの問題の主な原因として挙げられており、これを解決するためのアプローチとしてチームステップスが開発されました。
アメリカでは、2006年にこのプログラムが正式に導入され、その後、世界中の医療機関で広く採用されるようになりました。日本でも、医療安全の確保を目的として、一部の病院や医療施設でチームステップスの導入が進められています。

プログラムの構成要素:
リーダーシップ: チームリーダーは、状況を適切に把握し、チームメンバーに明確な指示を出す役割を担います。リーダーシップは、チーム全体の方向性を定める上で重要です。
状況モニタリング: チームメンバーは、常に周囲の状況を把握し、異常があればすぐに報告することが求められます。状況モニタリングは、リスクを早期に察知し、迅速な対応を可能にします。
相互サポート: チームメンバー間での助け合いが推奨されており、必要に応じてタスクの共有や代行が行われます。相互サポートにより、負担の偏りが軽減され、業務の効率化が図られます。コミュニケーション: チーム内の情報共有は、簡潔かつ正確に行われる必要があります。コミュニケーションが円滑に行われることで、誤解や情報の漏れが防止されます。

実際の医療現場での実践事例

チームステップスは、多くの医療現場で導入され、さまざまな場面でその効果が実証されています。以下に、実際の医療現場での具体的な実践事例を紹介します。


手術室でのチームステップスの実践:

ある病院の手術室では、チームステップスを導入することで、手術チームの連携が強化されました。手術前のブリーフィングで、チーム全員が手術の流れや患者のリスク要因を共有し、予期せぬ事態に備えた対応策が確認されます。また、手術中には、定期的に状況モニタリングを行い、異常が発生した場合には迅速にリーダーが指示を出す体制が整っています。
このアプローチにより、手術中のコミュニケーションエラーが減少し、患者の安全が向上しました。


救急外来でのチームステップスの適用:

救急外来では、患者の急変に迅速に対応することが求められるため、チームステップスが有効に活用されています。特に、複数の診療科が関与するケースでは、チーム全体が一丸となって対応することが重要です。
例えば、心肺停止状態の患者が搬送された際、各メンバーが自分の役割を即座に認識し、リーダーの指示の下で迅速に蘇生処置を行います。状況モニタリングによって、患者の状態の変化がリアルタイムで共有され、適切な治療が施されます。この結果、救命率が向上し、スタッフ間の信頼関係も強化されました。


病棟でのコミュニケーション向上:

ある病院の病棟では、チームステップスを導入することで、看護師と医師、薬剤師の間での情報共有が改善されました。毎朝のカンファレンスで、患者の治療計画やケアの進捗が共有され、必要に応じて即座に調整が行われます。
このプロセスにより、患者ケアの一貫性が保たれ、ミスや見落としが減少しました。患者からの満足度も向上し、医療チーム全体のパフォーマンスが向上しています。

チームステップスの効果と評価

チームステップスの導入によって得られる効果は多岐にわたります。以下に、チームステップスの主な効果とその評価を紹介します。


医療安全の向上:

チームステップスを導入することで、医療現場でのコミュニケーションエラーやミスが減少し、医療安全が大幅に向上します。特に、複雑な手術や救急対応など、リスクの高い状況でその効果が顕著に現れています。


チームワークの強化:

チームステップスを通じて、医療従事者同士の信頼関係が強化され、協力体制が整います。これにより、チーム全体が効率的に機能し、患者ケアの質が向上します。


ストレスの軽減:

チームステップスの導入により、業務の負担がチーム全体で分散されるため、個々のスタッフのストレスが軽減されます。また、明確な役割分担とサポート体制が整っていることで、安心感が生まれ、モチベーションも向上します。


患者満足度の向上:

チームステップスによるコミュニケーションとケアの質の向上は、患者満足度の向上にも直結します。患者に対して一貫した情報提供が行われ、治療やケアがスムーズに進行することで、患者の安心感と信頼感が増します。

まとめ

チームステップスは、医療現場でのコミュニケーションとチームワークを強化するための重要なプログラム
手術室、救急外来、病棟など、さまざまな場面でその効果が実証されている
医療安全の向上、チームワークの強化、ストレスの軽減、患者満足度の向上など、多くのメリットをもたらす

チームステップスの導入を通じて、医療現場全体のパフォーマンスを向上させ、患者にとってより安全で信頼できる医療を提供しましょう。

関連記事